粉雪降る街の喫茶店

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「──大丈夫だよ」  その言葉に、彼女はホッと胸を撫で下ろした。 「……ありがとうございます」 * * *  喫茶の中に入ると、マスターらしき中年の男性が出迎えた。若い男性と共に、窓際にある一つのテーブルへ案内してくれた。少女は椅子にロングコートを掛けると、其処に腰掛けて、テーブル隅にあったメニュー表を手に取った。  男性も彼女の目の前にある椅子に腰掛けると、メモ帳とボールペンを手に取って少しの時間、メモ帳を一ページ、一ページ、その中身を確認して捲っていた。その間、彼女は珈琲の入ったマグカップで温まりながら、そっと息を吐いた。 「──さて」  少しの時間と思いきや、店内にあった時計を見れば、大分時間が経っていた。  若い男性はいつの間にかメモ帳を捲る動きを止めて、少女と同じ様に珈琲の入ったマグカップを手に取っていたところが、彼女の目に映る。暫く沈黙が続いていたが、少女の目の前に居る若い男性からやっと口を開いた。 「改めて自己紹介しよう。私はルヴァン社のノアールと云う。今回は取材を引き受けてくれて、どうもありがとう」 「……いえ。こちらこそ、ありがとうございます」  彼女もやっと口を開き、顔を少し左右に振ると、頷く位の角度で一度お辞儀した。ノアールと名乗った若い男性は、準備万端だなと感心したかの様に一度頷いた。 「では、早速始めるとしよう。緊張しなくても……まぁ、何だか落ち着いているし、問題無さそうかな」 「……」 * * * Q1.今、飲んでいる珈琲の感想は? 「美味しいです。冷えた身体全体に行き渡る様に温まります」  その彼女の答えに感心したのか、マスターらしき中年の男性は笑顔で頷いた。 「それは良かった。では本題に入ろう」 Q2.先日、君の見つけた宝石はマングローブの沼の水中から──、種類はスピネルだそうだね?
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