粉雪降る街の喫茶店

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 その言葉にノアールはある事に気付いて、走らせていたペンを一時停止させると顔を上げ、少女の顔のある方を向いた。 「おや? 宝石の名前を付けているのかい?」 「はい」  彼女は相変わらず無表情で笑顔を見せる事は無かったが、一度頷いて答えた。  それでも彼はなるほどと感心した様に頷いて、一時停止させたペンを再びメモ帳の上で走らせた。 「ははぁ、しかし可愛らしいけれど、何の動物だろうね……。では、次の質問に移るよ」 Q5.今まで集めて来た宝石で一番印象に残った旅は? 「──ラピスラズリを探してた時」 「どんな旅だった?」  少女の口から出たその宝石の名前に、ノアールはどの質問よりも胸を躍らせていた。 「……空を飛びました」 「ほう」  彼は少し驚いた表情を浮かべると、目を輝かせてまた彼女に訊ねた。 「それはスカイダイビングの様な? それともお伽噺にある魔法の……」 「スカイダイビングですね」 「……そうだよね、うん」  彼女の答えに、ノアールは少しがっかりしている様だった。どうも透き通った空の様な純粋な心を持って聞いたから、子供の冒険の夢から一気に現実に引き戻された様な感覚で寂しかったのだろう。そう思いきや、然り気無くまた彼女に訊ねた。 「これは僕の知らない情報だから是非、教えて欲しいな」  ノアールはペンを持ち直すと、今にも書くぞと準備万端の態勢でいた。  少女は今も寝息を立てて太股で寝ているターコイズ、今も喫茶の窓の向こうを眺めているエメラルドと順番に目をやると、ターコイズの身体を撫でた。それから少し息継ぎをして答えた。 「山地の凄く高い所にあって、地上から登って向かうには厳しいという事で──」 「ふむふむ……」  持て余す事無い様に、ノアールはきっちりとメモ帳に少女の言葉を書き留め続けた。
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