粉雪降る街の喫茶店

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そんなところを彼に見られているのに気付くと、先程までの無表情で綺麗な人形から反転した様に、彼女は少し頬を赤らめた。  そんな様子を見てノアールは笑って、彼女も生きている人間で女の子なんだと感じていた。そして椅子の背に掛けていた茶色いコートへ手を伸ばした。 「……では。今回のお礼は、此処での飲食代と──お探しの宝石についての"手懸り"だ」  彼はコートのポケットから、一枚の紙切れを取り出した。 * * * 「ほんとに今日はどうもありがとう。記事が載る掲載誌が出来た時にまた連絡するよ」 「はい、ご馳走様でした」  インタビューが終わると、二人は喫茶を後にする。  少女はノアールにお辞儀して礼を云うと、雪降る街の何処へと踏み出した。  彼も別の何処へと踏み出そうとするが、未だそんなに少しも離れてない所で、他に言う事をふと思い出した様で「あ」と声を漏らした。少女はそれに気付いて、彼の居る背後へ振り返った。 「あと、宝石の情報も入ったら、ね」 「……」  少女は何も云わなかった。  ノアールは彼女の答えを待たず、軽く手を振りながら、別の何処へと踏み出した。少女はそれを見送ると、行く筈だった先へ振り返って歩き出した──。 「……雲の様に」  ノアールは街の外れでふと立ち止まって空を見上げた。  少女は街のまた違う外れを歩きながら、彼と同じく空を見上げた。  二人はそれぞれ相手に対して抱いた印象を、今も雪降る空に向けて独り言として浮かべた。 「……掴み所の無い子だな」 「……掴み所が無い人ね」
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