1. 三石文子は主人公になれない

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 しかし、本を読むことを小馬鹿にされたのは癪だった。それに“エンコイ”と呼ばれているドラマなら私も観ている。日頃から本を読んでいるお陰であなたたちよりも達者な言葉で感想を述べることができるのに。と反論したかったが、文子にそんな勇気はなかった。  スクールカーストという言葉が流行ってから、随分と時が経ったように思える。そんな粗雑な言葉で表して良いのかわからないが、たしかにそれ(・・)は存在する。    文子のような地味な“イケてない”人は吉永さんのように“イケてる”人にまともに意見なんてできない。ましてや“エンコイ”のような輝く恋なんて絶対にできない。 誰も口には出さないが、確かに区別されているのだ。  そういえば今日は体育とテスト返却がある日だ。嫌だなと思いつつ本の文字を追っていく。内容はあまり頭に入ってこなかった。
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