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俺と言う名前
少年の手が、僕の手に触れた
柔らかくて暖かい
少し擦りむいて傷になっていた手のひらは
いつしか綺麗に傷が消えていた。
少年は、ペロリと舌を出し自分の手の平を舐めた。
「…不味いね。あんた」
不味い?え?何が?
僕は少し頭が、追いつかなかった。
少年の靴が一瞬赤味を増した気がしたが、そこはどうでもよかった。
「君は、何か僕に用?僕ならもう大丈夫だよ」
少しキツく聞こえたかもしれない。
だが、少年はおかまいなしに、僕をみあげている。
もう、月が顔をだしている。
辺りはすっかり夜なのだが、この少年は
こんな時間まで外にいていいのだろうか?
まさか、虐待?
何だか急に不安になってきた。
「送るよ。家どこ?」
少年が指を指したのは
遥か遠く
月が輝く暗黒の闇だった。
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