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それはほとんど教師へのイジメとも言えるほどにエスカレートし、クラスの卒業を待たずにS崎先生は病気療養を理由に休職してしまった。
私たちの中学では、卒業文集は卒業式後、式の写真も掲載された物が自宅に郵送されることになっていた。
その際、三組のクラスの生徒には、S崎先生から手描きの絵手紙が同封されていた。
「その絵手紙が問題でね」
ほとんどの生徒の元に届いたのは、校舎とその周辺を描いた四季の風景画と「卒業おめでとう」のメッセージだったのに、S崎先生をイジメていた三人の男子生徒のカードには、燃え盛る業火の中に苦悶の表情で叫ぶ男の姿が描かれ、その裏には
「ミタラシヌヨ」
と、赤い文字で殴り書きされていた。
「M美も見たの? その『見たら死ぬ』絵」
「ううん、三人とも気味が悪いって、受け取って直ぐに破り捨てたんだって」
「仕返しにしても、随分と悪いジョークだね」
「そうなの、みんなそう思っていたんだけど」
たかだか中学の美術教師が描いた絵に、そんな呪力がある訳もなく、三人には何事も起きず、クラスメイトの記憶からもそんな思い出はすっかり薄れた頃 ―――
M美と三組の有志が、同窓会を計画しようと動き始めたのは、卒業二十周年を迎えた年だった。
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