ショートストーリー

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高垣杏奈が松本聡と出会ったのは 台風被害にあった地域の ボランティア活動に、杏奈が参加した時だった 聡の黙々と作業に取り組む姿が印象に残ったものの それ以上のことはなかった 聡から食事に誘われたのは それから2か月後 聡の事は心の底にはあったけれど もう記憶から消えようとしていた頃だ アドレスの交換は、ボランティア活動の仲間全員としていた 突然の誘いだったが、軽い気持ちで会うことにした 12月の冷たく静かな雨に、新宿の街は濡れていた 待合せ場所に早く着いてしまつた杏奈に ナイフのように尖った風が突き刺さる 会おうとしたことに、少し後悔する ス-ツ姿でやってきた聡は ボランティア活動の時とは別の顔を見せ 杏奈のことをまっすぐ見つめながら 仕事に対する熱い想いを語った 酒の勢いを借りたのだろうか 「杏奈さんには、今付き合っている人いるんですか」 あまりに単刀直入な質問に 「特に、いないけど」 私は考える暇もなく答えていた。本当は、何人かの男に付き合ってほしいと言われていたけれど 「えっ、本当ですか? 信じられない。杏奈さん、絶対にモテると思うんだけど」 「恋愛に臆病なんです、私」 半分本当で、半分は嘘 「じゃあ、僕と付き合ってくれませんか。まずは、友達からでいいんで」 静かで無口だと思った男は、意外にも明るく話し好きで積極的な男だった あれからもう3年 多少の倦怠期もあったけれど 二人は着実に愛を育み 最近では、お互いに結婚のことが頭にあった まだ、聡からのプロポ-ズはないけれど
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