伊豆

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「カレちゃん」 凄い雨と風なのに その声はなぜかはっきりと 聞こえた。 ハッとして振り返る。 私を呼んだのは哲朗君だった…… どうして? 気づかれないようにそっと出てきたのに…… 哲朗「カレちゃん こっちおいで……」 そう言って手を差し出す。 私が今、何しようとしていたか 分かっているはずなのに そんなの全然気づいていないように 小さく笑って ほらって言う。 その時頭の中で声がした。 その手を取れと。 早く海から上がれと…… 哲朗くんの笑顔を見ながら ゆっくりと一歩一歩波打ち際に向かう。 手を伸ばし哲朗君の手に触れた瞬間 ぐいっ っと引っ張られ その腕に抱き締められた。 哲朗「カレちゃん お帰り」 耳元でそう言うと身を起こし私の顔を覗きこみ にっこり笑って私の濡れた前髪をかき上げた。
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