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谷「ああ、崎山さん。
大丈夫ですか。
痛いところありませんか?」
谷先生は私に歩み寄ると手を差し出した 。
『私の方こそすいません』
そう言いながら何も考えず手を伸ばすと
温かく大きな手が私の手を包み込むように握り
ぐっと力が入って引っ張られる。
力を入れて立ち上がったとたん
ツルリっ
高いヒールが災いしてまた転びそうになる
『ひゃっ!』
変な声を上げガシッと何かに包まれた。
とたん ふわっとシトラスと
微かに消毒液の香りが鼻孔を擽る。
これって もしかして……
谷「大丈夫ですか?
崎山さん 意外にそそっかしいんですね…」
ため息と一緒に頭の上から谷先生の声が降ってきた。
転びそうになったわたしを先生が抱き止めたんだ。
『わわわわわわわっ ごめんなさいっ』
慌てて身を起こし先生から離れる。
きやーっ 先生にっ先生にっっ
どどどどどどうしよう
半ばパニックになって胸の前で両手を振りながら
『すいませんっ
ごめんなさいっっっ』
と真っ赤になって謝ったとたん
なぜか先生は手を伸ばし私の手首を掴むと
上に羽織っていたカーデの袖をグッと押し上げた。
「…っ」
彼は一瞬息をのみ縁無し眼鏡の向こう側で
眼が見開かれた。
え…?
険しく眉間に皺が刻まれその表情に
驚きながら掴まれた腕に視線を下げハッとする。
そこには 朝見たよりも もっと酷い色になった
アヤトの手形や乱暴された痕が残っていたのだ。
ーーーーーーっ
『離してっ』
見られたっ
先生に見られたっ
焦って先生に掴まれた腕を自分の方へと引っ張り
その手をはずそうとする。
『イヤッ 先生っ離してっ
見ないでっ』
谷「崎山さん、落ち着きなさい
…っ 落ち着いて」
先生の冷静な声が聞こえたけれど
興奮してしまっていた私には届かない
『離してっ離してよっ!』
そう悲鳴のように叫んだとたん
掴まれていた手が外され
ぎゅうっとその腕に抱きしめられた。
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