3497人が本棚に入れています
本棚に追加
『えっ?
診るって…
先生専門は呼吸器じゃないですか』
びっくりしてそう返すけど
先生は柔らかい笑顔を浮かべたまま
谷「専門はそうですけど 一応医師ですからね。
簡単な怪我など診れますよ。
ほら、ここに座って」
と言った。
その笑顔に誘われるように
窓辺から離れ先生の横に座る。
谷「良い子ですね。
じゃあ、上着脱いでください。」
えっ?!
『ぬっ脱ぐんですかっ?!』
まさか脱ぐなんて思ってなかった私は
びっくりして先生の顔を見た。
谷「脱がないと診れないですよ
…もしかして恥ずかしいのですか?」
小首を傾げ ジッと私の眼を見つめ
真面目な顔をしたまま こう口にした。
谷「じゃあ、僕が脱がせてあげましょう」
ひーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
すっと伸ばされた指がガーデの襟元に
触れそうになり慌ててソファーに身を沈めた。
『じっじっじっ自分でっ、自分でしますっ』
あわあわする私をクスクス笑いながら
先生は手を引っ込めた。
谷「そうですか?
残念ですね」
せっ先生ってこんなキャラだったの?
今までのイメージと全然違う…
いやーーーーっ(泣)
カーデを脱いでノースリーブのワンピ姿になると
先生はすっと真顔になり私の手を取った。
持ち上げ色んな角度から見て
紫色に変色した場所に神経質そうな長い指を滑らせる。
谷「ここ痛いですか?」
一際目立つ手首にある大きな手の形の痕
『大丈夫…です』
二の腕の後ろ
ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
谷「あぁ ここが痛いんですね。』
痛みに顔をしかめると直ぐに気がつき
シップを貼りサージカルテープで固定した。
反対の腕も診て今度は左肩を包むように
先生の手のひらが触れた瞬間 ズキッ
『痛っ!』
思わず声をあげた。
縁なし眼鏡越しに先生の眼が微かに険しくなり
二の腕を掴み直して左肩を上下させる。
谷「こうしたら痛いですか?」
首を横に振ると ホッと息を吐き
谷「骨には異常はないと思いますが……」
また左肩を包むように手のひらで覆うとそっと押された。
ーーーーーっ!
痛い。
肩を動かすのは痛くないけど
触られると鈍い痛みが走る。
谷「ちょっと後ろを向いてもらえますか?」
『?…………はい』
モゾモゾとお尻の位置を変え先生に
背中を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!