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高校時代
高校生のころ、私には好きな人がいた。
その人は隣のクラスの秀才くんで、科学部の部長だった。頭のいい人というのは不思議な人が多いのか、その彼は友達が少なくて、無口で、いつも理科室にこもって実験をしていた。顔もかっこいいわけではない。それでも、私は彼のことが好きだった。
高校1年生の部活動見学の時、すでに科学部への入部を決めていた彼は、私たちが見学をするときにはもう部員として活動をしていた。科学部らしく学生服の上に白衣を着て、もくもくと真剣な顔で実験をする彼の横顔に、ひとめぼれしてしまったのだ。
それから毎日のように私は科学部へ通った。彼はもくもくと実験をするだけで私には話しかけてくれなかったし、そんな風に通い詰めた私は他の部活に入りそこねた。
科学部に入ろうかと一瞬思ったけど、彼と同じ空気を吸って日々を過ごすなんて考えたら、心臓がばくばくしてしまって、呼吸困難になりそうだったので、やめた。
とにかく、私は高校時代の放課後は毎日科学部の前の廊下から、こっそり彼を眺めていたのだ。
今日もかっこいい彼の名前は、堺耕太くん。昭和っぽい名前と漢字も彼の大人っぽい雰囲気によく合っていた。
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