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大学についた。自転車置き場に止めて、私はまた走り出す。キャンパスは広く、迷子になってしまいそうになる。高校の時はこんなことなかったのに。
毎日通いつめていた理科室は私のなかで心落ち着ける場所になっていた。しかし、今では通うことのない場所として、行くのに勇気がいる場所として、私のなかにおちていた。
『こんな僕のことを好きになってくれる君は希有な存在だと思う』
階段をかけあがる。息がきれる。会いに行くのに、こんなに乱れた状態でいいのだろうか。少しでも、なんて思って手櫛で髪をとくが、あまり変わらない気がした。そもそも、女の子に対して「希有」ってなんだよ、希有って。
長い長い廊下を通って突き当たりの場所。私の大好きな彼のいる場所。
いつもしっかりしまっていた実験室の扉は珍しく開いていた。
「耕太くん!!」
声の限り叫ぶ。
耕太くんは私の顔を見て、私が握りしめている紙を見て、
「…読めた?」
と笑った。
本当に困った人だ。
「高校の時に研究していた新しい紙だったんだ。数年たつと紙の変色によって文字が浮かび上がるようになってるんだ」
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