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「ふう」
歩き出すと、ため息が出た。
いつまでこんな生活が続くんだろう?
思い返せば一年前。
就職の内定が一向にもらえず、うなだれて入った定食屋さん。その時食べた親子丼がとても優しくて、私は思わず泣いてしまったのだ。
「どうしたんだい? 何か辛いことでもあったのかい?」
オロオロしながら声を掛けてくれた女将さんに、私は、今まで頑張ってきたこと、頑張っても頑張っても成果が出ないこと、これからどうしたらいいかわからず不安になっていることなど、まるで子どもが親に甘えるみたいに、息もつかず一気に話した。
「じゃあさ、しばらくうちで働いたらどうだい? ちょうどうちもバイトが辞めて困ってたとこだよ。ねぇ、あんた、いいだろ?」
全てを吐き出した私の肩を優しく抱くと、女将さんは厨房に佇む店主に同意を求めた。
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