123人が本棚に入れています
本棚に追加
「お父さん? お母さん?」
ドアを開けると、そこには、父と母がいた。
父が鏡の前でネクタイと格闘し、その横で、母が鏡台に向かって口紅を塗っている。
「ちょっと。何してんの? 二人とも」
「あ、おかえり。ちょっと待ってて」
ティッシュで口紅を押さえながら、母がこちらを振り返った。
「どうでもいいけど、どうしたの? その格好」
父はスーツ、母はワンピースという、明らかによそ行きの出で立ちだ。
「だって……。雫が星夜さん連れて来るって言うから、お父さんが……」
「二人で来るってんだから、そりゃあ結婚の報告に決まってんだろ。そういう時は正装と、相場が決まってる」
父はなぜか、得意げだ。
最初のコメントを投稿しよう!