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「いやぁ、星夜君! 久しぶり。元気にしてたかい?」
一張羅に身を包んだ父が、右手を上げながら星夜に挨拶した。
「ちょっとお父さん! 私には何もないの?」
「ああ、雫もおかえり。久しぶり」
「もう! ついでみたいに言わないでよ!」
「まあまあ、照れ隠しなんだから、大目に見てあげてちょうだい」
母が、料理とお酒を手に、父の隣に座る。
「お父さん、いっつも『雫はどうしてる? 電話してみろ』って、大変なんだから」
「だってなぁ。娘のことは心配なんだよ、父親ってのは。星夜君、キミも娘を持ったら、私の気持ちがわかるよ」
父が星夜にお酌をし、星夜が「すみません」と言いながら受けた。
「星夜君。こないだはすまなかったね。いろいろ面倒かけて」
「いえいえ」
「なにせ一人娘でね。心配なんだよ。ましてや親元離れて暮らしてるだろ? 目が届かないと、不安で不安で……。しかもコイツは、嘘までついて……」
父に睨まれ、バツが悪くなった私は、誤魔化すようにビールを一口飲んだ。
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