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「だけどね。あの日、星夜君が見せてくれた映像を見て、安心したんだよ。雫は、一人でもちゃんとやってるって。ちゃんと地に足をつけて、踏ん張って生きてんだって。キミの撮った映像には、それがしっかり映ってた。だから星夜君。俺はキミに託したんだ。この大事な娘を。キミになら任せられる。そう思ったんだ。だって、あの映像には、『愛』がこもっていたからね」
自分の言葉に照れたのか、父は恥ずかしそうにニヤリと笑うと、一気に盃を煽った。
「お父さん……。すみません……」
「何謝ってんだよ。こういう時は、『ありがとう』だろ?」
「……ありがとう……ございます……」
泣きながら、星夜は何度も何度も頭を下げた。
「あらまあ、泣き虫なお婿さんだこと」
母がティッシュを持ってきて、私に渡した。私はそれを受け取ると、星夜の涙を丁寧に拭ってやった。
食卓が笑いに包まれた。
真実は、私と星夜しか知らない。
私たちは、必死で、笑顔の下に哀しみを覆い隠していた……。
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