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風呂上り、私は窓を開けて星を見ていた。
空気が澄んでいるせいか、いつもの倍くらいたくさん星が見える。
「雫……」
風呂から上がった星夜が、窓辺の私にゆっくりと近付いてくる。
「星、綺麗だよ」
「ほんとだ」
星夜は私を後ろから抱き締めると、髪に顔を埋めた。
「同じ匂い」
「変態」
「雫も、変態の仲間にしてやる……」
私の顔を自分の方に向け、星夜が優しくキスをした。
束の間の幸せが、二人の周りを包み込む。
私たちは寄り添ったまま、しばらくの間、星を眺めていた。
「そろそろ記憶の転送が始まるんじゃないの?」
星夜はいつも、星を見た後すぐに眠りに就く。
それが、記憶を転送する為だったと知ったのは、一昨日のことだ。
「多分もう大丈夫だと思う。だって、明日には回収できるから……」
星空を見上げながら、切なそうに、星夜が答えた。
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