共に

24/27

122人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
翌朝。 朝食を終えると、私たちは早々に、帰り仕度を整えた。 「もっとゆっくりして行けばいいのに」 母の想いに、「いろいろやる事あるから」と、嘘で固めた笑顔を返す。 もうこれ以上、二人の顔を見ていられなかった。 「それじゃあ……」 立ち上がろうとした時。 「記念に、みんなで写真撮らないか?」 急に思い付いたように、父が言った。 「いいですね」 母は喜んでカメラを持って来ると、いそいそと三脚を組み立て始めた。 「恥ずかしいからいいよ……」 涙がこみ上げるのを必死で抑えた。 「いいじゃない。おめでたいんだから」 カメラを三脚に固定すると、母はセルフタイマーのスイッチを押した。 「ほら、真ん中に入って」 私を押しながら、母が隣に並ぶ。 両親に挟まれ、私たちは笑顔を作った。 セルフタイマーを示す明かりが、チカチカ光った。 「お父さん、お母さん、今までありがとう」 シャッターが切れた。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加