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「望月あかねです。皆さんに助けてもらいながら、主任として頑張ります。どうぞ、よろしくお願いします。」
ナースステーションの中に、あかねの声が響いた。白衣を身にまとって5年という速さで看護主任になったのだ。同期の中では、異例のスピードで出世コースに乗っていた。そのため、周囲の視線は冷めたものだった。
朝の病棟は、検査の準備や夜勤からの申し送りのために、ざわついていた。ナースステーションにいた看護師たちは、一瞬だけ、あかねのほうに視線を送ったが、すぐに通常業務に戻っていた。あかねは、主任になれたことに高揚し、みんなの視線の奥に気づいていなかった。
休憩室には、夜勤明けの看護師たちが、濃いめの珈琲と誰かのお土産のお菓子を囲んで雑談をしていた。夜勤明けは、疲れている割には、ナチュラルハイ。今日はあかねの主任挨拶があったせいで、ナチュラルハイ以上のはいテンションだった。
「さっきの見た?もう、鼻息荒すぎ~」
「あんな人が、なんで主任なの?」
「知らないの?あの人、師長のお気に入りなんだって」
「お気に入りって、実はボーイズラブ的な、あれ?」
「もしかしてね」
「マジ?キモーイ」
「ホントかどうか、チョット、やっちゃう?」
夜勤明けの看護師たちは、夜の緊張から解放されていた。
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