やっぱり眠れない

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全く。 そりゃね、いびきかかないって約束信じたわけじゃないわよ。無理ってわかってる。 そうじゃなくて。 先に絶対寝ないって言ったほうを信じたの! なのに。 やっぱり先に寝ちゃって。 うるさくて眠れないじゃないいいいい!!! ・・・目が覚めてもその怒りは持続していて。 怒ったまま、ばっと飛び起きる。 もういい加減にしてよ。全く、いつもそうなんだから! ぎいと歯ぎしりしそうなくらい怒ってるわたしは。 ん?  だんだんと現実的な夢から。目が覚めてくる。 暗い部屋に一人起き上がって。 リアルな夢ってホントにあるのね。目が覚めてから、困惑するなんて初めてだわ。 わたし、なんでシングルの布団に寝てるのかしら? たった今まで怒ってた自分が可笑しくて。 嗤ってしまう。 嗤いながら、ぼとぼと落ちる涙を止められない。 たった今まで信じてた「夢」が。 羨ましくて涙が止まらない。 シングルの布団に寝ている自分が不思議で。 たった今まで15歳も若かった自分が懐かしい。 なんであんな昔の夢を。 まるでタイムスリップでもしたみたいに鮮明に。 あの時から10年くらいはいびきに悩まされたっけ。 でももう。主人の鼾は聞こえない。 静かな部屋。静かな家。たったひとりのわたし。 あんなに怒っていた自分さえ羨ましい。 目覚めた瞬間、私はまだふたり家族だったんだ。 また涙が出てきてびっくりする。 いやだ。 主人が亡くなってから5年近くなるって言うのに。 近くにあるカーデを肩に引っ掛けて。・・・仏壇の前に座り込む。 ちーん とおりんを鳴らす。 うちにいる仏様。主人だけだもん、うるさくしたってかまうもんか。 ちんちんちんちんちーん。 一生大事にするって言ったくせに。うそつき!  ばぁか! 仏壇の主人の写真に。考えられる限りの悪態をついて。 ・・・わたしは、ぶぶうっと鼻をかんだ。
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