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君のいる日常
朝、目が覚めればいつも君が隣にいた。大きなベッドの上で小さく丸くなる君が好きだった。綺麗なツヤの黒いセミロングも、大きな瞳も、細い指も全部、大好きだった。
君より早く起きて、君を眺めるその時間が一日の楽しみだった。
君がいないこの部屋は俺独りには大きすぎて、もう君がいないんだという事を突きつけられる。
「ひどいくせ毛なの」
恥ずかしそうに言った君が可愛くて、頑張って直す姿が愛おしかった。
「最期は庭に埋めてくれない?」
バラが香る庭は君のお気に入りの一つだったっけ。庭にテーブルを出してお茶をするのも好きだった。俺は花のことも、お茶のこともよく分からなかったけど、君と一緒にいられることが幸せだった。
「暗い……」
ぽつり呟いて明かりを点ける。それなのに暗いまま。淡いピンクのカーテンもくすんでいる。
何を食べても味がしない。夜も眠れずにいる。たくさんの睡眠薬を飲んでやっと微睡みが訪れる。
深い眠りは君がいなくなってから来ない。
何故か君はいつも俺より先にいる。俺を守るように一歩前にいて、俺が守りたいと思っても、君のほうがずっと強かった。
それなのに、君は俺を遺して行ってしまった。
守れずに君は、俺の先を行ってしまった。俺はこれからどうしたらいいのだろう。生きる気力もない。
暖かく穏やかな感覚。
今日は久しぶりに、薬を飲まないでも眠れそうだ。
……このまま覚めなければ、俺は君のところへ行けるのだろうか。
朝はもう来ない
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