その手は

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「ーくん…!」 昨日のことを思い出すとなんだか不思議な気分になる。全部物覚えのある事のような気がして… 「晴くん!」 「…!時雨さん!すんません…」 仕事中なのに考え事をしてしまっていた。お金が発生しているのに…時雨さんは俺の事を心配そうに見つめている。 「どうしたの、なんか今日ボーッとしてるね」 「俺…」 「大丈夫?俺でよければ話聞くよ。今は暇だし」 さっき迄は忙しかったけれど、今は店内には誰もいない。こんなのメンバーに言えるわけがない、俺は時雨さんの好意に甘える事にした。 「口がぶつかっちゃって…」 「え!キス…って事?もしかしてそれを撮られちゃったとか?」 「違います!外じゃなくて…」 そうだった、俺アイドルしてるんだった。昨日やっと仕事があったのに何忘れてるんだ俺。 俺の言葉が上手くないせいで時雨さんにちゃんと伝えられない。それでも時雨さんは理解してくれようと頑張ってくれている。 「…部屋の中でキスされたと?」 「友達に」 時雨さんは険しい顔をし始めてしまった。 「それ…セクハラじゃないの」 「そうなんですか!」 「同意じゃないんでしょ。ダメじゃない」 黒葉のあれはセクハラだったのか。仕事が忙しくて女の子と遊ぶ時間が無くて変な気を起こしてしまったのだろうか。 「危ないから、好きな子ならいいけどたとえ友達だとしても、異性と2人っきりにはなっちゃダメだよ」 「あ、相手は男っす」 「え…?」 時雨さんが目を見開いて驚いてしまっている。そっか、普通は男同士でなんてする訳無いもんな…変な事を言ってしまった。でも嘘を付ける程の器用さは俺には無い。 「いやいや、それでもダメでしょ。酷い奴だな…同性相手なら当たり前に気を抜いちゃうだろ」 時雨さんは何故か怒ってしまっている。 「俺もちゃんとしてなかったので…心配してくれてありがとうございます」 「ちゃんとって…そんな事言っちゃダメだよ。もっと自分を大事にしないと。どういたしまして」 普通に同意じゃないのってダメだよな? でも黒葉の言っていた「俺はお前だけのものだよ」っていう言葉が気になる。なんなんだろう、この気持ち。
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