1.被害者であること

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  「名前と被害者との関係を仰ってください」 「河野蓮司です。ジェローム・シェパードの上司です」 「彼に最初に会ったのはいつですか?」 「入社面談の時です」 「第一印象を教えてください」 「やる気に満ちていました。他の面談者に無い気迫を感じました」 「職場に入ってからの様子は?」 「仕事の覚えは早いし的確で誠実な社員です。理想的な新入社員を得たと感じたのを覚えています」 「すごい評価ですね」 「評価に値する人物です」 「趣味や彼の指向をご存知ですか?」 「趣味は仕事ですね。嗜好は甘いものが好きということは誰もが知っています」  冴木は咳ばらいをした。蓮はわざと嗜好と答えたのだ。ここまでの流れの緊張感が一気に解れてしまう。 「異性や同性との付き合いはいかがでした?」 「彼はあまり人づきあいが上手ではありませんでした。けれど職場に慣れ始めてから打ち解けて仲間意識を持つようになりました。職場内での付き合いはあくまでもその延長線上のものです。彼の誠実さがみんなの信頼を勝ち取りました」  ちょっと質問が途絶えた。逆に蓮は落ち着いていた。上司としての評価、見解ならいくらでも言える、何度も評価表を書いてきたのだから。   
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