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3人は会社に戻る途中で食事を取った。
「参ったな……ジェイに役に立ったようには思えないよ。ああいう場所では結構だらしなくなるもんだ」
「俺もですよ。自信あったのに……あんなに畳みかけるように聞かれたら途中で何がなんだか分かんなくなります……」
「花、お前には辛い思いをさせた。申し訳なかった」
蓮は頭を下げた。どんな思いをしただろう…… 花とジェイの思いが重なって見える。
「いえ……出所してたってことに頭が行っちゃって……くそっ、その後ケンカ腰になったような気がします」
激しい口ぶりで野瀬が言う。
「そんなことないよ! 凄く冷静に答えていた。そんな思いをしながらお前はジェイのために戦ってくれたんだな…… 俺には真似できないよ」
沈黙が続いた。
「課長の答え方、お手本みたいでしたね」
空気を変えたくて花が言う。
「相手、何も突っ込めなくなっちゃって」
「ホントだ。やっぱり課長は課長だ」
「ずい分中途半端な褒め方だな、野瀬」
上手く行ったのだ、そう西崎は言った。けれど蓮の中にある疑問はそんなことではなかった。
(あの追及にジェイは耐えられるのか?)
我を忘れたらお終いだと思う。花だから持ちこたえられた。だが、一つ躓くとそこから一気に崩れるだろう。
常に冷静であること。質問を分析すること。必要なのはそういったものだ。自分ができたのは、これまでの業務が自然にそういう考え方を培ってきたからだ。
(ジェイ……今のままでは負けるぞ)
あくまでも相手の弁護士の求める答えは一つだ。ジェイに相田を受け入れる要素があったこと。
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