1.被害者であること

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   会社に戻った三人を見て、あれだけ様子を知りたがっていたジェイは話を聞くことを避けた。花に声をかけられても、今は手が離せないと断った。  明らかに逃げているのを花も感じている。とうとう花はジェイをオフィスから引っ張り出した。 「どうしたんだ? お前、知るのが怖くなったのか?」  返事をしないジェイに、そうか と呟く。 「座れ、何が飲みたい?」 「いいです」  花は勝手にアップルジュースを買って渡した。 「ありがとう」 「俺さ、上手に言えなかった。裁判所って緊張するな! お前、俺が連れて行くから何回か行ってみた方がいい。あそこって、建物に入っただけで威圧感を感じるんだ。場慣れって必要なんだなと思った」 「そう」  キャップも開けずにジュースを握りしめている。 「飲めよ、冷えてるうちに」 「うん」 「明日渡せるよ、メモ。ほとんど出来上がってるんだ。帰りに一緒に飯食おう。お前のノートと突き合せようぜ」 「……勝てると思う?」 「冷めてりゃ勝てるよ。課長見ててそう思った。すごかった、課長の回答。弁護士の追及を寄せ付けなかった。途中で相手は諦めたよ」  ほっとした。蓮なら負けないとは思っていたが、逆に、蓮さえ負けるならどうしようと気持ちの中にそんな不安もあった。 「頑張るよ。……うん、明日、お願いします! やっぱり全部思い出すのが早道だと思う。きっと不安になるのは自分が分かってないからだ。イヤとか怖いとか。そんなこと言ってる場合じゃない。みんな俺のために頑張ってくれてるのに俺がそれを言っちゃいけない」   
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