458人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
今のジェイなら。
(今のお前なら立派にやってのけるよ。負けるな、あんなヤツに!)
「昼、どうした? まさか一人で外に行ってないだろうな」
「今日はチームで食べに行ったよ。あれこれお喋りしてた。翔くんはバトミントンやってたんだって。強かったらしいよ。石尾くんは水泳だって」
「そっか! 今年の夏はさ、チームで泳ぎに行こう」
ジェイは焦った。自分だけ泳げないのだ、それが恥ずかしい。
「俺、今年の夏休みは墓参りとかいろいろあって……」
「写真撮ってさ、哲平さんに送ろうかと思ってたんだけどな」
「ごめん、ホントに忙しいんだよ」
まず泳げるようにならなくちゃならない。焦っているジェイから、さっきまでの緊張感がちょっと遠くなる。
「でもさ、チャンスあったら夏、みんなでどっか行こう。もう三途さんに『山に連れてく』って言われる心配無いから安心だよ。チーフと忙しいだろうしね」
「それはどうかな……」
ジェイが危ぶむ。
「なんで?」
「リベンジするつもりらしいよ。イチさんがそう言われて困ったって」
「げ! 懲りないなぁ。でもチーフが止めるよ」
「チーフも付いてくって言い足してるみたい。一人じゃ行かせられないから」
「ド素人のチーフが一緒? じゃ、二人で遭難かよ」
「花さん! 縁起悪い」
三途の退院は6月だ。会社への復帰が待ち遠しいような、怖いような。
最初のコメントを投稿しよう!