1.被害者であること

5/20

458人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
  「あ! 蓮、またエッチなこと考えてる顔してる! 俺、ホントにイヤだからね!」  昨日の二の舞になりそうだから蓮は言葉を控えた。 (良かった。昨日から記憶を辿る作業をしてるのに、その反動が出ていない) 「ジェイ。俺がエッチでごめんな。もうやめるよ。悪かった、そんなに嫌なのに抱いてしまって。深く反省する。1ヶ月、絶つよ。今夜から俺はソファに寝る」  ポカンとしているジェイを置いて寝室から枕と毛布を取ってきた。 「さ、お前もゆっくり寝ろ。疲れてるだろ? これなら安心して眠れるよな。もっと早くこうすれば良かったよ。お休み」  電気を消しに行こうとした後ろにジェイが飛びついてきた。 「ごめんなさい! 俺、文句ばっかり言って……一緒に寝て? お願い、蓮。したかったらしてもいいから。だから……」 「分かった。怒ってないんだな? ならベッドに行くよ」 「うん。ごめんね」 (あああ! 頭から食ってしまいたい!)  物騒なことを考えそうになって、ジェイをベッドに追い立てた。本当に今日はもう眠らせてやりたい。まだ最低二人の行動が分からない。ジェイも不安を抱えているはずだ。  電気を消してベッドの中で腕を伸ばした。その上にジェイの頭が乗ってくる。額にキスをした。 「おやすみ、ジェイ。何かあれば起こしていいからな」 「ありがとう……お休みなさい、蓮」  背中に回った手から力が抜けていくまで蓮は起きていた。  『れん……』  呟く寝言にまた頭を撫でた。 (明日はお前のために頑張ってくるよ)  しばらく蓮は眠れなかった。   
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

458人が本棚に入れています
本棚に追加