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「野瀬、緊張してるな」
「だって何聞かれるか分かんないですからね」
「俺も緊張するつもりなかったんだけど。野瀬さんがブルッてるからこっちまで心配になる」
花の軽口に野瀬は言い返す。
「お前、相変わらず失礼なヤツだな!」
時間が近づいてくる。西崎からの注意は頭に残っている。
(俺は落ち着いている。大丈夫だ)
そして始まった。
花は西崎の質問に的確に事実を答えていった。あの日の帰りの様子から順を追って。
「では、駐車場で被害者がいないことに気がついたんですね?」
「はい、そうです」
「真っ先に気がついたのはなんですか?」
「ジェロームのビジネスバッグが車のそばに落ちていたことです」
「それから?」
「ジェロームの車が何か固いものに叩かれたように傷だらけになって凹んでいました」
「他に見たものは?」
「血の痕です。駐車場に、誰かが引きずられた痕が残っていました」
「次に被害者を見たのはいつですか?」
「事件の翌々日です」
「その時の様子はどうでしたか?」
「事情を確認しに来ていた刑事から被害を受けた時の自分の写真を見させられて混乱していました」
「被害者は事件を認識していましたか?」
「いいえ、分かっていませんでした。写真を見てこれは自分じゃないと繰り返していました。」
「では、被害者が加害者にされたことで喜んではいなかった?」
「怖がっていました、一人にされることを。助けてくれなかったとなじられました」
「以上です」
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