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ぼくは、白い龍を飼っている。
夏祭りの夜に、すくってきた。
周りは赤色だらけの中で、綺麗な真っ白だったから、すぐに決めた。
こいつは、ぼくのだって。
何回やってもすくえないぼくを見かねたように、ぼうや、好きなの一匹選びなど、露天のおじさんは言ってくれた。
喜んで、ぼくはこいつを、選んだ。
おじさんが困った様子で、こいつで本当に良いのかい、と聞くけど、もう遅い。
こいつは、ぼくのものだ。
ママに見せると、不思議そうな顔をして、そんなのもいるのねえ、と間延びした声を出した。
パパは、あまりもちそうにないな、と苦笑した。
よくわからないが、両親はこいつをあまり気に入っていないようだ。
ぼくが白い龍だよ、というと益々怪訝な顔をして、あまり馬鹿なことを言うのは止しなさい、とパパが言った。
ぼくは悲しくなったけど、ぼくの頭の中だけで、白い龍って呼ぶことにした。
龍の絵本を読んだ。
そのとき、白い龍が描いてあったんだ。
白い龍の背中に乗って、空を飛ぶ主人公。
読んだときから、ぼくも欲しくて、欲しくて、たまらなかったんだ。
こいつはそんなに大きくないから、背中には乗れないかもしれないけど、空を飛ばせて散歩をさせたい。
学校の皆に自慢したいんだ。
白い龍は、ママに水が入った透明の鉢に入れられていた。
水がないと、生きていけないんだって。
そのうち陸に上がって、空を飛ぶようになるのだろう。
学校で習ったんだ。
こいつ、両生類ってやつなのかな?
ママに聞くと、眉をしかめて行ってしまった。
どうしてだろう。
あ。
ぼくはひらめいた。
水中から陸へ上がり、空中へ。
こいつは両生どころか、三つの世界で生きている。
スッゲエ。
ぼくは興奮した。
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