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夢の中、私は霧の中にいた。
ゆっくりと進むゴンドラの行き先はどこなのかわからない。
ゆらゆらと進むゴンドラは真新しい船で、霧をかき分ける先端はまるでハサミのように霧を左右に分け入っていた。
「麗奈…」
遠くて誰かが呼んでる。
「誰?」
その声に答えはない。
「麗奈…」
何度となく呼ぶ声は、大きくもならなければ小さくもならずに呼んでいた。
ゆらゆらと揺れるゴンドラが止まった。
見渡しても何もない。
切りに包まれて何も見えなかった。
心細い。でも、声すら吸い込まれて消えていく。
「麗奈!」
大きな声と共に眩しい光が射し込んだ。
「麗奈!」
驚いて大きく目を見開いた。
「麗奈、大丈夫か?」
そこにいたのは、麗志だった。
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