悲愴のセレナード

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それから、ピアノは聞こえなくなった。 気になって家に行ったけど、老夫婦はいなくなってしまったと言い、もし会ったらいつでも戻っておいでと伝えてと。 お婆さんは涙ぐみ、お爺さんは声を震わせた。 とても優しそうな二人で、剣斗といつ知り合ったの?、あの子のビアノは聞いた?とか、まるで私を友達のように迎え入れ、お茶とお饅頭を出してくれた。 私が余計なことを言ったからかもしれませんと言うと、 「あの子はそんなことであなたを嫌いにならないわよ。」 と、お婆さんは私の手を握った。 カサカサで皺もある手がとても温かくて、大丈夫よと背中を擦られたら、涙が出た。
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