悲愴のセレナード

8/30
前へ
/155ページ
次へ
少しの食事をさせていただき、美味しいお味噌汁に心がほっとした。 麗志のお屋敷での暮らしは、何不自由なく暮らさせてもらっている。 何から何まで甘やかされ、申し訳ない気持ちになるくらいだ。 でも、ただ物足りないのは、日本食が少ないことだった。 お味噌汁をいただくなんて何日ぶりだろう。 しかも、こんなに美味しいお味噌汁はお母さんのお味噌汁以来だった。 涙が溢れるとまたお婆さんが心配そうに覗き込み、優しい手が背中を擦った。 そのあと、剣斗の部屋へ入った。 ベッドとローテーブルしかない簡素な部屋で驚いた。 でも、きれいに掃除されているどころか、生活感さえなかった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加