悲愴のセレナード

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めくるか否か、前に立ち悩んだ。 この後ろに何があるのだろう。 もうひとつの部屋? それとも、鏡? 開けたら何があるのだろうと思い続けたら衝動を抑えられず、ゆっくりと布を捲ってみた。 そこにあったのは、古びた格子戸だった。 鍵はかかっておらず、開けようと思えば開けられる気がした。 でも、ここを開けてはいけない不吉な予感がする。 格子戸の奥から何か香りが漂ってきた。 何の香りかわからない。 それなのに、そこから動けなくなった。 とても怖さを感じているのに、動けない。 気を抜いてしまったら吸い込まれそうな錯覚にさえ陥る。
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