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秀吉との出会い
秀吉と、三成は、天正二年(一五四七年)に出会った。
秀吉は織田信長の家臣として、近江長浜(滋賀県長浜市)十二万石の大名となり、伊吹山に鷹狩り行った帰り、観音寺という寺に立ち寄った。
秀吉が、
「喉が乾いた。茶をくれぬか。」と、言うと、
一人の寺小姓が、大きな茶碗に、たっぷりと入った、ぬるいお茶を持ってきてくれた。
秀吉は、その茶を、全て飲み干すと、
「すまぬが、もう一服。」
と、言うと、その寺小姓は、少し熱くしたお茶を、大きな茶碗の半分ほどに入れて持ってきてくれた。
そして、それを飲み干すと、
「もう一服。」
と、言うと、その寺小姓は、次は、大きな茶碗に、熱くしたお茶を少しだけ入れて持ってきてくれた。
秀吉は、寺小姓の、細やかな気配り感心した。
そして、その寺小姓に名前を尋ねた。
「そちの名は?」
寺小姓はかしこまって、答えた。
「石田村の、石田正継の子で、佐吉と申しまする。」
秀吉は、大きくうなずいた。
そして、帰り際、観音寺の住持に頼んだ。
「佐吉を、もらい受けても、よいか?」
住持は、
「当然でございます。きっと、佐吉も喜びます。」
あの子には、見込みがある。秀吉はそう思い、佐吉を、城へとつれて行き、小姓として、自分のそばにつかえさせた。
そうして、佐吉は、三成と名を改め、ほとばしるような才気を愛され、秀吉が関白となったときに、二十六歳の三成は、従五位下治部少輔となり、豊臣家を支える五奉行のひとりとなった。
さらには、文禄四年(一五九五年)、近江佐和山(滋賀県彦根市)十九万四千石の大名となっていったのである。
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