香り

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小林さん。 お母さまは、私に向きなおって深呼吸をして話し始めた。 息子はあなたのラジオを聞いて、楽しんでいたのは事実なんです。あなたからたくさんパワーをもらっていたのは間違いないのです。 だから自分を責める心は持たないで。息子の死は正直とても辛いです。苦しいです。人のいないところで実は、たくさん泣きました。この涙を流す人は、これで最後にしてほしいと思います。小林さんは明るいポジティブなエネルギーをもっているから、息子みたいな人たちを助けるDJになってほしいと思います。そういう意味で手紙をお送りしました。 きっと息子もそう願っていますから。 お母さまの瞳から涙がこぼれた。私も涙を止められない。私はお母さまの手と握り感謝を述べた。 「お母さまの、彼の想いに応えられるDJになります。」 マイクの前に座るとき、私は何万、何十万というリスナーと向かい合っていると改めて思う。いろんなリスナーの想いと、私の前向きなパワーで進んでいくと決めた。 線香の香りが改めて感じられる。彼が私の側にいるような感覚が駆け抜ける。 帰るとき私はお母さまの手を再び握り、いたわりと感謝の言葉を述べた。 お互いに頑張りましょう。お母さまの言葉は重さを感じる。 「SNSはご覧になりましたか」 「SNS・・・ですか」 お母さまから彼のSNSの存在の聞いたのははじめてだった。。そしてあまり意識していなかった。影響力について。 SNSについて、あとでみてみますと話、私は彼の街に別れを告げた。 夏の太陽と線香の香りが連結され、記憶になった。
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