大切な人

2/2
前へ
/2ページ
次へ
ずっと、ずっと待っている。 あなたのその眼差しや、あなたの愛情がいつか私に向けられる日が来ることを。 この世には白か黒しかないと言われたあの日… もしもなんて世界はない… だから、グレーは?と聞く私は弾き出された。 グレーのない世界でグレーを探そうとする私を見るあなたの目は、いつだって呆れてた。 ただただ話を聞いて欲しかっただけ… 私も会話に入れて欲しかっただけ… 嘘でも良いから… 一度でいいから… あなたのことが1番大切よって言って欲しかった。 私はずっとなりたかった。 あなたのその眼差しや、あなたの愛情を一身に受ける彼のように。 私を見る顔はいつだって険しくて、目を閉じて思い出す顔はやっぱり険しい顔をしてる。 彼のことは生まれた時から無条件に愛せるの… そう笑顔で私に微笑んだ。 なんとなくの思いつきで… 私が発した言葉の数々は、刃となって戻ってきて… また受け止めてもらうことは出来なかった悲しみで 、これ以上刃に苦しまぬよう言葉選びに慎重になった。 私は覚悟もできていた。 あなたのその眼差しや、あなたの愛情を受けられるなら、あなたの敷いたレールの上を歩くことなど容易いことだと。 向けられないとわかっていながら、あなたの敷いたレールの上からはみ出さぬように慎重に歩いてきた。 少しでもはみ出ようものなら、あなただけでなく周囲も皆敵になる… それを私は知ってたから。 だけど守るものができた今… 私に必要なのはあなたじゃない。 私はずっと待っていた。 あなたの眼差しや、あなたの愛情が私にも向けられることを… 待っていたから気付いてしまった。 それは永遠に来ないということを。 待つのはやめた。 私の新しい大切な人が、私のように、 私の優しい眼差しと、私からの愛情を求めて手を伸ばしてくれたから。 私が本当に待っていたのは、 あなたじゃないと気づいたの。 あなたという暗闇の中で、 歩き続ける私のことを、 救い出してくれる一寸の光を… 私はずっと待っていたんだ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加