雪のような

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僕があなたに会ったのは、夜中の街だった。 あなたは閉店後のお店の薄暗い光に照らされたウィンドーをウインドーに鼻がついてしまうのではないかというぐらいに顔を近づけて、薄暗い光にあなたの顔は青白く照らされていた。 他の誰とも違っていたから僕はあなたに惹かれたのだと思う。 あなたを僕はその夜に発見した。僕はなんだかそんな風に感じた。ずっと探していた何かが、目の前に現れたと思えた。 あの日僕はあなたにどう声を掛けたのか実は思い出せない。でも、一つの言葉で、昨日とは全く違った今日が訪れることになるだなんて、僕は想像をしたことはなかった気がする。 あの日から3年が過ぎて、あなたが「好きな人ができたの」と言った時、僕はまた一人に戻るんだと考えていたことを覚えている。 僕はあなたを所有することはでかないのだから、あなたに好きな人ができて僕から離れていくことを止めることはでかない。 頭ではわかっていても、心がそれに納得できないでいる。 あの時考えた一人に戻るということはきっと確かなことだけれど、三年前とは全く違う。同じ一人でも、あなたに未練を残したままの一人はなんだか三年前の一人よりも寂しのではないかと思える。 あなたを思う時、僕はあなたはまるで雪のようだと思う。僕は暖かい街で生まれたから、大人になるまで本物の雪を見たことがなかった。子供の頃に思い描いていた雪は、白く小さくて可愛くて暖かそうな もの。でも実際の雪は、白くて小さくて可愛いけれど、手のひらで僕の体温で簡単に溶けてなくなってしまう。 あなたは確かに僕の手のひらにあった雪のようなもので、握りしめていたと信じていたのに、手を開いた時にはもうそこには無かった。 時間が経てばあなたの事をきっと忘れることができる。いつのまにか季節が変わっているように、別の季節の中で僕はあなたではなくて、別のことを考えはじめるだろう。 時間に流されて、僕はまた何かを発見できるだろうか。 僕は失うということを知ったのだから、次は失うことを恐れずにいられるだろうか。でも、もしできるのなら、次は失うことがない何かを手に入れてみたい。 明日のことは誰にもわからないから、僕は時の流れに身を任せて、ありのままを希望を持って受け入れたい。 でもまだあなたへの思いが残っている今は、もうすこしその思いに苦しんでいよう。
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