今日の善き日に

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今日の善き日に

尼崎から電車を乗り継いで阿倍野へ。今は大人になったせいか、交通が便利になったせいなのか、 (近いもんや、子供の時はエラ遠いと思てたけど) なんて考えながら路地を入る。突き当たりの塾の一階が事務室。裏が塾長の家やから、授業がない昼間でもたいてい先生等はここでダラダラしてる。 「こんにちは」 「あれ、新婚の綾ちゃんやないか!」 タニヤン先生が言えば 「ダンナに可愛いがってもろてるか?」 と塾長が続ける。 「相変わらす明け透け(下ネタも遠慮なく)やなあ」 「明け透け、結構やないか、なんでもオープンや、先週は御馳走さんやった、エエ結婚式やった」 タニヤンが言うてくれた。 「ありがとうございます。改めて挨拶回りをしてんねん。」 頭を下げた。 先週、私は結婚式を挙げた。 「今どき、式なんか挙げる人おらんで!お金勿体ないし」 正直、そんなお金は貯金して将来の持ち家とか子供の教育費にあてたかった。 「ある!お金はお母ちゃんがチャンと貯めてます!」 鶴の一声。打ち掛け、ドレス、フレンチフルコースとやりきって、披露宴のオチにはハートの風船まで飛ばす騒ぎ。 アホらしい気もしてたけど、場所探しとかでダンナのお母さんとも仲良くなれたし、何より衣装合わせや引き出物選びではお母ちゃんがスゴく楽しそうにしてたから「これも親孝行か」ってくらいの軽い気でおった式一週間前やった。
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