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壱 魔法の定義
「魔法使いになりたい」
鏑城聖 は常であればごく平凡な一般的高校二年生である。
それはもちろん常であればの話でありいつでも平常心で過ごす人間などいないだろう。
ましてや若干のロマンチスト気質にある聖君が某有名な魔法映画を見た次の日、最高に暇な月曜日の放課後、ちょっとハッちゃけた発言をしてしまったとしてもそれはなんら不自然なことではないのだ。
「・・・・・・」
そして図書室で優雅に読書中な 帶刀冬威 は親友たる聖の奇怪な言動を華麗にスル―するだけのスキルを有していた。
「無視すんなよ。そこは無視しないでくれよ。笑ってもいいから何かしら反応してくれよ。傷つくだろうが!」
「無視じゃない。これは断じて無視ではない」
「無視じゃなかったらなんて言うのコレ」
「スルー。無視とは、視、無い。こと。俺お前のこと見てるだろ? 熱烈に見つめているだろ?」
「いや、この場合熱烈に見つめている方が問題だからな? むしろそのほうがタチ悪いからな?」
「盲点だったな」
「眼科行け」
そんな仲良さげな楽しい会話を数分間にわたって繰り広げてから聖は姿勢を変えた。
テーブルをはさみ向かい合って至近距離で言い合いをしていたとなれば腐った読者を喜ばせるだけで自分には何のメリットもないことに気付いたからだ。
この小説は薔薇ではない。
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