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「魔法使いになりたい」
しっかりと冬威からは距離をとり、間違っても嗜好を疑われない姿勢で聖は先の台詞を繰り返した。
「・・・ほう」
あそこまで徹底的な無視を受けてなお言葉を繰り返す。その聖のある意味勇気ある行動に敬意を表し冬威は微小な反応を返した。
「なりたい」
「・・・で?」
しかし、その後どうやって会話を成立させるのが正解なのか全くわからなかった。
この気まず過ぎる沈黙は決して冬威の悪意によるものではない。
「冬威君はとっても物知りでいらっしゃるだろ?」
「いらっしゃらない、いらっしゃらない」
「魔法使いになりたい」
「お前さ、もう少し会話の展望をシュミレーションしてから発言した方がいいぞ。マジで」
「魔法使いになりたい」
割と切実な冬威の助言に返す言葉もなく、聖は過去最大級の恥を売る覚悟でひたすら「魔法使いになりたい」をごり押してみた。
「魔法使いに・・・」
「お前もう止めとけよ。マジで。火傷増やしてどうするよ」
「魔法・・・」
「わかった。お前の覚悟はわかった。義務教育からやり直してこい」
「冬威、お前優しさとかねーの?」
「はっきり言ってやろうか? ない」
心が折れそうだった。ガクッと机に突っ伏した聖だがもはや引けない所まで来てしまっている。
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