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「魔法って何なんだろうな」
「・・・は?」
「魔法ってなんだと思う?」
「・・・魔法は・・・魔法だろ」
聖は自分で言っときながら心の中では意味わかんねーと自分に突っ込んでいた。こういう場合百パースルーされることがわかっているからだ。
「魔法、魔力を働かせて不思議なことを行う術」
「広辞苑第六版より引用。な」
「じゃあ魔力ってなんだと思う?」
「お願いだからもうこれ以上俺に恥を売らせないで。冬威も恥売れ」
「嫌。なんだと思う?」
「知らねーよんなもん! 魔法は魔法! 魔力は魔力だろ!! なんかあれじゃねーの? こう悪魔かなんかの力でも借りてちちんぷいぷいアバダケダブラ言っとけばいいんじゃねーの?」
「今さりげに俺を殺そうとしただろ」
「ナンノコトダカワカリマセンネ」
「魔力、人を迷わす妖あやしい不思議な力」
「ほぉう・・・」
「ほら、お前仕事しろ」
「え、ああ。広辞苑第六版より引用。ってこれ語り部の仕事だろ」
「つまり、俺が何を言いたいのかと言うと」
冬威は非常にメタい会話を強制的に打ち切り広辞苑をバタンと閉じた。
「魔法ってのは、ほとんど、とか、結構、とか、大体、とかと同じくらい曖昧な言葉だよなっつーこと」
「うん・・・、まあ言いたいことは何となくわかるんだけどな。その表現適切なわけ?」
「聖、日本語ってやつはな。曖昧なもんなんだよ」
「へえー。流石。秀才の言うことは違うね」
「ありがとう。褒め千切ってくれて」
「で? だから何なんだよ」
「言ったとおりだよわかんねえの?」
「冬威、そのナチュラルに人を見下すような態度やめた方がいいぞ。モテないから」
「大丈夫、大丈夫。最近流行ってるだろ? 俺様系男子。俺はそれを目指すから」
「いや、お前マジでもう少し人に優しくあれば人気者になれると思うゾ」
「その台詞を言っていいのは人気者だけだ」
「俺は人気者だろうよ。だってイケメンだから」
「ノーコメント」
放課後の誰もいない図書室で俺とじゃれてる時点で人気者ではない。と言う残酷な事実は胸にしまっておくことにした冬威である。なぜなら、そのほうが滑稽で面白いからだ。
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