壱 魔法の定義

5/11
前へ
/13ページ
次へ
「お前が魔法使いになれるかどうかはさ、何をもって魔法とするか。その一点にかかってると愚考する訳だ」 「本当に愚考だな。っつったら怒る?」 「怒る。激怒する。三途の川のほとりを見せて差し上げる」 「おっけーおっけー。軽い冗談だ。で? なんつったっけ。魔法が曖昧だって?」 「お前が俺の話をどれだけ真剣に聞いてくれているか手に取るようにわかるな」 「お、わかってくれたか。俺がお前をどれだけ大切に思っているか」 「で、離婚届ってのはよく聞くけどさ。絶交届けってのはどこに提出すれば受理してくれる?」 「ああ、芦澤と絶交するのか。あいつ嫌な奴だからな」 「芦澤君と親友になるわ」 「芦澤は、あいつはなぁ・・・」 「閑話休題! 意味わかるか?」 「わかんねえ」 「辞書引け」  聖が閑話休題と言う四字熟語を学んだところで閑話休題。 「何の話だったっけ」 「俺としてはもうこの話は終わりにして速やかに帰路についてもいいんだけど? て言うかそれが良いな。そうしよう」 「あ、思い出した。魔法使いになりたい」 「あれ? 話が一っつも進んでない・・・?」 「で? 曖昧模糊な魔法使用は無理難題でどうしたって?」 「四字熟語辞典を置け。でないと話にならん」 「才色兼備で文武両道で傲岸不遜で唯我独尊で天上天下な冬威君」 「覚えたばかりの言葉を使いたいのはわかるがそれ本当に俺様をただ褒めてるだけだぜ? いいの?」 「後半は思いっきりディスったぜ?」 「話を進めようっつってんの!! 俺ぁもう帰りてえんだよ」 「そこは俺を本気で無視して帰らないあたり冬威君の優しさだよなぁ」 「さよぉならぁ」 「馬鹿野郎。結局これが一番身近な四字熟語だよなぁ」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加