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「化け物とは心外な。私とあなたの種族が違うだけですよ。」
田中はまんじりとも動けなくなった若者の肩に手を置くと、一気に喉元に食らいついた。
「ゴブゥッ」
おかしな叫び声をあげると、若者はすでに声を発することができなくなった。
何度も何度も食らいつき、鋸のような歯で若者の首はズタズタになり、ついに骨が見えて来た。
「そろそろお腹がいっぱいになりました。残りは・・・。」
田中はトランクに若者を押し込むと無線で告げる。
「すみません。客に逃げられてしまいました。」
無線の向こうから声がした。
「田中さん、大丈夫だったですか?お怪我は?」
「大丈夫ですよ。暴力は受けていません。」
「ドライブレコーダーは?」
「すみません、なんか故障してるみたいです。」
抜かりはない。電源は切っておいたのだ。
「このまま直帰していいですか?」
「ああ、仕方ないね。気を付けて。」
いつの間にか雪が降り始めていた。
血にまみれた地面を、白い雪が覆って行く。
今日はクリスマスだったな。
思わぬプレゼントができた。
子供たち、喜ぶかな。
田中は満足げに、タクシーのトランクを叩いた。
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