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ホワイトクリスマス
「あー、本当にこの時期、書き入れ時なんだけど、やっぱ怖いよなあ。」
白髪交じりの角刈り頭を掻きながら、玄さんが言う。
「そうそう、やっぱり酔っ払いの客とか乗せるんだから、こっちだって戦々恐々とするよな。」
カップコーヒーを湯気を立てながら啜っていた博さんも頷いた。
ここはとあるタクシー会社の事務所。
「幽霊が怖いとかなんとか言うけどさあ、結局怖いのは人間だよな。」
外でタバコを吸っていた文治さんが、外の寒さに背中を丸めて手を擦りながら事務所に入ってきた。
「こないだも、タクシー強盗があったばかりだべ?」
地方出身の信二さんはいまだに方言が抜けない。
「タクシー強盗も怖いけど、踏み倒しも怖いよなあ。こっちは正当な料金を請求してるのによ。ぼったくりだなんだのって言いがかりつけられたんじゃたまったもんじゃないよ。」
「まあ、最近はドライブレコーダーがついてるから、後から犯人はつかまるんだけど、あらかじめ被害は防げるわけじゃあないからな。」
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