第2章 タイミング

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下校時間。 『孝人…悪い、今日一緒に帰れない』 『あ…そうなんだ。オケ、じゃまた明日』 諒太が鞄を持って教室から出ていく…。 たまには帰れない事もある…か。 俺も荷物をまとめていると 『なぁ孝人、今日ちょっと付き合ってほしい場所があるんだけど……一緒に来てくれないかな』 吉野がパチンと手を合わせて頼んできた。 『…女子かよ』 『キュンとした?』 プッと吹き出す。 『するかよっばーか。どこにいくんだよ?』 吉野がそーっと顔を近づけてきた。 『…実はさ…俺、彼女ができたんだよ』 『っえ、そう…なの?!』 吉野がウィンクしてくる…。 どうりで上機嫌なわけね 『きもっ』 『焼くなよ焼くなよーっ』 『焼いてねーわ。で、彼女に…関係あるとこにでも行くの?』 『あ、そうそうそれだった!』 そう言って吉野に連れていかれた場所…。 『なぁ…吉野。俺……超絶恥ずかしいんだけど』 『お、俺も…』 テディベアだらけのカフェだった……。 頭にくま耳とか付けられたし 周りの女子の視線が痛い…… 男二人でこんなとこ入ったら… こうなるよな……。 『だってさ…彼女が行きたいって言うから 下見に行っとこうかと……しかしまさかのテディベア…。』 『…とりあえず…早く食べて出よう』 俺はメニューを広げる。 『…確かに店名、ベアカフェか…早く気づくべきだった』 吉野が顔を手で隠す。 うわぁ…メニューもくまメニュー… とりあえずスタンダードなカレーライスを2つ注文した。 『おまたせいたしましたっクマ』 店員さんが、クマ語でカレーライスを持ってきた。 背中がゾワゾワする……。 カレーの中で…… ライスで出来たクマが笑っている。 『吉野……早く食べて出るぞ。今日、おまえの奢りだからな』 『…………はーい』 とにかくこのクマ雰囲気に耐えられなくて 俺たちは高速でカレーライスを食べて 店をあとにした。 吉野がブツブツ前を歩いている……。 『良かったじゃん……先に見といてさ。違う店を探せるし』 『……そうだ…な。今日はホントありがとう……なんか笑えるーっ』 男二人であんな可愛い店に入ったなんて…本当に笑える…。 『あっ!…なぁあれ諒太じゃね?』 『え?』 交差点の向こう側に諒太の後ろ姿が見える。 …でも隣に誰かいる……ような。 諒太が路地に入っていく。 『ちょ、追いかけよう』 吉野と俺はこっそり着けることにした…。
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