第4章 諒太の過去

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白石が何かを抱えて戻ってきた。 『座ってて良かったのに』 『……俺、あんまり長居するつもりないんで』 『じゃぁこれだけ見ていってよ』 白石がふわっと笑い… テーブルに乱雑にアルバムを置いた。 『……アルバム?』 ページをめくると小学生ぐらいの白石や白石の家族写真がたくさん挟まれていて…… 小学生の白石の隣に見覚えのある…… 『……これ、りょ、うた?』 『そうだよ』 白石は俺の隣に座り、ビスケットを食べながら答えた。 どのページをめくっても白石と諒太が 一緒に写っている…… なんで……白石と……。 『これ、この人。諒太の忘れられない人だよ』 白石と諒太と少し…年上の青年と3人で写っている写真があった。 『……忘れられない人?』 『諒太の好きな人』 ズキッと心の中が音をたてる…。 す、好きな人って……どうゆうこと…… 俺は動揺を隠しきれなかった。 『……孝人くんさ、本当に何にも知らないんだね』 『…………』 『俺と諒太は施設育ちなんだよ。この人は、俺と諒太を可愛がってくれた、光さん』 施設……? ……俺は諒太の両親にも何度もお世話になって…… 本当の親じゃないってこと……? 頭の中が混乱している…… 『……施設って……俺は諒太の両親も知ってるよ』 『諒太の親御さんは里親なんだ。俺と諒太は小学校に入学する少し前に、里親が見つかって養子縁組をした。』 白石は…写真の光さんを指差して 『……とにかく…幼い時に諒太は光さんに恋していて……中学二年生ぐらいの時に光さんと諒太は付き合い始めた……諒太の初めての相手は光さんだよ』 ……ショックで言葉が出ない…… 俺……本当に諒太の事何も知らない 『でも……昔の事なんだろ?』 『…………諒太が孝人くんに好きって言ったのかもしれないけど…諒太の気持ちにはいつも、いや、まだ光さんがいるんだ』 『……諒太と光さんはどうして別れたの?』 『光さんは里親さんの転勤でイギリスに行ったんだ……遠距離になって上手くいかなくなった。そのあと俺は……諒太を慰めたりするうちに好きになって……少しの期間付き合ってた』 心臓がズキッズキッと痛んで…… 苦しくなった……。 何も知らなかった自分と 諒太に教えてもらえてなかったショックと 諒太の好きだった人と… いろいろな感情がごちゃ混ぜになって…… 俺はアルバムを閉じた。
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