第1章 親友

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『こっちです!この部屋です!』 大きな声と同時に カラオケボックスの店員さんと吉野が入ってきた。 『何してるんだ!警察よぶぞ』 店員さんが大声で怒鳴る。 男は急いで部屋を出ていった。 『……吉野』 『おまえ、トイレ行くって言って 戻って来ねーから、ちょっと廊下に出てみたら 声が聞こえてさ。部屋覗いたら……ヤバそうだったし。』 『……サンキュ、助かった…』 心臓バクバク鳴ってる。 吉野が諒太に近づき 『……それより諒太、大丈夫か?』 『…………ありがとう。大丈夫』 『今から警察行くか?』 吉野が心配そうに俺と諒太を交互に見る。 『…吉野、ごめん。ちょっと諒太と話したいから、解散していい?今日は奢るから』 『あ、あぁ。全然大丈夫だよ。なんかあったら連絡しろよ……じゃぁな』 『吉野……本当にありがとう』 バタン…と部屋のドアが閉まる。 吉野が来てくれて…本当に良かった。 後ろを振り返ると 諒太が弾けたシャツを引き寄せながら 制服のジャケットを着ていた。 『……諒太…大丈夫?』 『……なんで』 『え?』 『なんで助けるんだよ…』 諒太がジャケットをギュッと握りながら 俺を見つめる……。 『な、なんでって…さ』 『…嫌なら放っておけよ。』 『嫌なわけ……ないだろ?』 『…っ』 諒太の頬に涙が静かにつたう…。 『ご、ごめん諒太。あ、怖かったよな?』 『……っ』 『と、とりあえずさ、出よ』 『…ん』 俺は鞄に入っていたタオルで諒太の顔を拭く。 『痛っ』 『あ、ご、ごめん痛かった?』 『……』 て、てゆうか…… なんか…動揺してしまう…… さっきから俺の心臓うるさい いろいろ聞きたいことがあったけど 何から聞いたらいいか どう切り出したらいいか わからなくて…… 荷物をまとめ… 荒れている部屋を…なるべく綺麗に整えた。 店員さんに謝り… 一度目だからまだ親や学校には連絡しないとのことで……内心…ホッとした。 軽く注意を受けて 俺と諒太はカラオケボックスをあとにした。 諒太を家まで送り届ける。 『…孝人、寄っていかないか?』 『……え、あ、うん…』 友だちに戻ったんだよな? 俺たち。 若干…身の危険を感じたが頭を振り払う。 あんなことがあったあとだし… 諒太がちょっと心配だった。 あと…あの男は誰なのか あの男の事を考えると…なんかイラついてきた。
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