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『敬は……大学卒業後すぐに結婚した。でも……結婚してすぐに希さんに子どもができないことが判明して……。…会社の事や親族からの重圧で……いろいろすごく悩んでいたんだ。その中で……養子縁組みの覚悟を決めて……。諒太くんが養子で来た時に、様々な差別や偏見があったみたいだけど……。二人は諒太くんを大切な我が子として……跡継ぎとして育てる決意をした』
真剣な眼差しで父さんが俺を見つめる………。
『どうゆうことか……わかるか?』
『………………』
『孝人………柳瀬家が代々築いてきた国際的オフィスで……時期社長になる男が…ゲイだと噂になったら……あの会社はどうなると思う?』
俺は………父さんが言っている意味がよくわかった。……わかりたくなかった。
『今はまだ孝人も諒太くんも……若くて分別が付かないだけだ。今のうちに………おまえから手をひくんだ。孝人の人生もあるし。噂は………一生スキャンダルとして世界で取り上げられるんだ。まだ……10代の今なら間に合う。………孝人、諒太くんとはまた友だちに戻れる』
目に………涙がいっぱい溜まって
こぼれそうになった。
母さんが俺の背中を優しく撫で……
『そんなに諒太くんの事を………想ってるのね……。でも………好きならちゃんと……諒太くんの事を考えてあげなきゃ』
『………………』
やっぱり………男同士の恋愛なんて……
親友の諒太との恋愛なんて………
おかしいってはじめから思ってた。
確かに………父さんが言うとおり………
あの大企業の名前に傷がついたら
周りの信用も失ってしまうかもしれない。
もう………俺はどうしたらいいのかわからなくなった。
『さ、今の話は終わり。年越し蕎麦を食べましょうよ、孝人の好きな大海老、奮発して買ったんだから』
さっきの雰囲気を崩すように母さんがにっこり微笑みながら、お蕎麦を注いで俺と父さんの元に持ってきてくれる………。
父さんも柔らかい雰囲気に戻って
『孝人、来年は家族で良い年にしよう。父さんと母さんに何でも相談するんだぞ』
ポンと優しく俺の頭に触れた。
いよいよテレビでカウントダウンが始まる。
来年はいろいろ決断の年になりそうだ………。
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