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マサくんは二歳年上の私のことを『サユさん』と呼ぶ。それは高校時代、彼が私と同じバレー部に入部してきた時からずっとだ。
高三の夏。引退試合の後に一年生のマサくんに告白された。
その前からマサくんの好意はダダ漏れで、それが可愛いと思っているうちに私もどんどんマサくんに惹かれていった。
だから、付き合うことにしたんだけど、マサくんは『サユさん』という呼び方を変えようとしなかった。
カレカノになったんだから呼び捨てにしてと言ったのに、それはまだ早いの一点張り。マサくんは結構頑固で自分なりのこだわりがある。
さん付けされると遠く感じるよと言ったら、『サユさん』の”さん”には敬愛の気持ちを込めているんだと言われた。
私が思わず【敬愛】をググったのも無理はないと思う。
そんなマサくんが私を『サユ』と呼び捨てにする時がある。
寝呆けている時と、私を抱いている時。
きっと彼は心の中では『サユ』と呼んでいるに違いない。でも、普段は年上の私を立てて、さん付けにしているのだろう。
だったら私は彼が歳の差を気にしなくなるまで待つだけだ。それまでは『サユさん』で我慢しよう。
そう思っていたのに、マサくんが『華絵さん』と呼ぶのさえ気に食わないなんて、いつの間に私はこんなに傲慢で心の狭い女になっていたんだろう。
『華絵さん』の”さん”にも、敬愛の気持ちが込められているのかな?
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