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レイプされた翌日から、何度も真由から電話がかかってきたけれど、私はどうしても出られなかった。
彼氏に襲われたと話しても、『サユが誘惑したんでしょ?』と責められるかもしれない。私さえ黙っていれば、真由は彼氏と今まで通りでいられる。そんなことを考えていた。
でも……あんなケダモノと付き合っていたって、真由が幸せになれるわけがない。
やっとそのことに気付いた私は、真由にすべてを話した。
真由は私を責めたりせずに、ただゴメンねを繰り返した。
――ちょっと束縛が強いだけだ。暴力を振るうのだって、私がちゃんとしていないから仕方なくだ。叩いた後はあんなにも優しいんだもの。
そんな風に自分を騙して耐えていたのだと、真由は打ち明けてくれた。
私のことがきっかけで真由が彼氏と別れられたのは、不幸中の幸いとしか言いようがない。
『私は心の底から幸せだと感じることを諦めてしまってたんだと思う。』
そう言って泣きじゃくる真由に、大丈夫、これから幸せになるんだよと励ましの言葉を掛けたくせに、私の方が諦めかけていた。
マサくんに隠し事をしたままでは、幸せにはなれない。
それはわかっていたけれど、他の男に犯されたことをマサくんには知られたくなかった。
真由はマサくんにきちんと話した方がいいと何度も忠告してくれたけれど、私は汚れてしまった自分が恥ずかしかったし、それを知ったマサくんが私から離れて行くのが怖かった。
愛すれば愛するほど、失うのが怖くなる。だから、時が経てば経つほど私は言えなくなっていた。
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